わたし達の未来をつくる「アイデアソン・ハッカソン」~世の中を変える商品開発【視覚障害を持つ方編】~に参加しました
イベントの概要
このイベント(わたし達の未来をつくる「アイデアソン・ハッカソン」~世の中を変える商品開発【視覚障害を持つ方編】~)は、障害のある当事者の方々が自らの直面する課題をエンジニアに共有し、その解決を図るプロダクトやサービスを実際に開発するイベントです。
8月18日は、視覚障害を持つ方編のアイデアソンということで、私もAIスピーカー・エンジニアとして課題解決のお手伝いをすべく参加しました。
イベントとしては、最初にインプット・トークがいくつかあり、その後午後にグループに分かれてアイデアソンとなりました。各グループには、視覚に障害のある当事者の方が含まれており、その方の日常の課題を共有しながら、アイデアを発表するところまででした。
インプットトーク1
- タイトル
- 「世の中に無いなら、自分がつくる」
- 講演
- 神戸ライトハウス理事長 太田様
- 25年前、中途失明で点字が読めない状態で、点字の教科書を読まなければならなかった
- 墨字の教科書が途中から別のテープになっていて頭出しに困る
- 東洋医学の用語は同音異義語が多い
- Windows3.1の時代にOCRで印刷物を読み上げるソフトが登場 → 医学用語は読み上げない
- その後、別ベンダーが東洋医学の辞書を作った → 医学用語が読み上げできた
- 詳細読みで同音異義語の問題も解決した
- それでも、読み上げでは正確ではないところがある。「方」を「かた」と読むなど
- OCRと読み上げのいいところ → 自分のペースで読み上げができること。晴眼者に頼むとペースが早い、聞き取れなかったところに戻ってもらうのに気兼ねする
- パソコンが不安定ですぐに固まる → 家電量販店は初期状態には戻してくれるが支援技術は入れてくれない
- 知人に頼むと、頻度が多いと気兼ねする
- 県に依頼してもだめだった
- 自分たちでNPOを作って、以下を始めた
- 支援技術の導入
- 教科書の録音
- パソコンやOCRの操作方法を教える
- 保険請求の代行も始めた
- 前向きな障害者の方と一緒に進めていってほしい
インプットトーク2
- タイトル
- 「自社製品の福祉活用による販路拡大」
- 講演
- エクスポートジャパン株式会社 代表取締役 高岡様
- もともと、訪日外国人向け情報提供の会社であった
- 経営理念: ビジネスを通じて多文化共生社会に貢献する
- あるきっかけで、インクルーシブ(障害のある方も含めて)活動していこうとしている
- JICAのサイト、JRや京阪の外国語サイトを担当している。japan-guide.comもやっている
- 別の会社で開発したQR Translator
- スペイン語のチラシのQRコードを読むと、日本語に翻訳されたページと、日本語での読み上げもされる
- 神戸ライトハウス様から依頼を受け、視覚障害者の情報取得に応用しようとしている
- 障害者にも利用しやすいシステムにすることによって、サービスの販路を拡大することができた
- 情報提供者にも、情報が広く知れ渡るメリットがある
- 実際の視覚障害者のニーズに合わないといけないので、日本全国の視覚障害者の支援団体にコンタクトをとって、100人規模の実証実験をおこなった、NEDOの補助金を申請して費用をまかなった
- iOSのVoice OverやAndroidのTalk Backに対応したアプリを開発した
- VIP Code Reader blind scanner
- 紙媒体の中で、90センチほどスマホを離しても、QRコードのある場所のあたりをつけることができるようになってきた
- QRコードが紙のどのあたりにあるかわかるように、QRコードのある紙の角を切るスキームも考案した
- 実証実験によって、知りたい情報として、「売ってる食料品・飲料の商品の種類」、「原産地」や「賞味期限」などが一番ニーズがあることがわかった
インプットトーク3
- タイトル
- 「視覚障害を持つ人を支援する製品やサービス」
- 講演
- 株式会社ラビット 代表取締役 荒川様
- 視覚障害者むけ機器の販売をしている
- 視覚障害者は、紙のものはOCRで読み上げて使う
- ゴミの判別に役立つと言われた
- 晴眼者に読んでもらっても問題ない書類か、事前に判断するために使えると営業トークしていた
- お札の判別の話
- 今はiPhoneで大半のことが実現できるが、スマートフォンが使えない人もいる
- その場合には専用の機器があるが、紙幣の判別機などは高額である
- 移動支援・障害物認知
- 世の中には障害だらけで歩くのが怖くなる
- だから逆に何もないところで障害物認知を使って、急にくる車などを検知するようにしている
- 超音波メガネ 今は壊れている
- 車両と車両の連結部分が判断できるので、何両目かがわかる
- 超音波メガネでアイススケートをしたかったが、壁にぶつかってしまった
- 万能な商品というのはないので、それぞれ適材適所で使うのがよい
開発事例
- タイトル
- 「視覚障害を持つ人を支援する製品やサービス」
- 講演
- ネクストビジョン 和田様
- パームソナー
- 超音波を使って、対象物との距離を測って振動と音に変える
- 対象ものに近づいくにつれて音と振動が大きくなる
- トラックなどにぶつかることを避けられる
- 指向性が特徴で、左右の指向性が15度ある→杖のような感覚で使える、周囲の環境を確認できる
- 杖と共に使う
- 慣れたところで使う
開発事例
- タイトル
- 「視覚障害を持つ人を支援する製品やサービス」
- 講演
- 京都福祉情報ネットワーク 園様
- 京都福祉情報ネットワークで障害者にパソコンを教えている
- ピッポッパロット 今は売られていないい20年くらい前の話
- 名刺の文字を読むのにMS-DOSでプログラムを作り、電話番号を認識して、エンターを押すとモデムを作って電話をかけることができた。ただ外出先では使えない
- 電子手帳で同じようなDTMFで電話をかけるハードを提案した → 販売台数について意見の相違があった
- 実際には、2、3年で5000台が売れた
- そのころ、らくらくホンが普及し始め、役割を終えた
- ニーズと技術がわかっていれば、いろんな技術開発ができるなと思った
PR及びご紹介1
- タイトル
- 「ワールドマスターズゲームズ2021関西」について
- 講演
- 公益財団法人ワールドマスターズゲームズ2021関西組織委員会
PR及びご紹介2
- タイトル
- HoloLensのご紹介
- 講演
- 日本マイクロソフト株式会社 技術統括室 小坂様
- VRの仮想現実と現実正解をミックスさせたMR(複合現実)
- この部屋という空間を認識させて、部屋の中の椅子の上に仮想のオブジェクトを出現させる。椅子を引いたら、それを認識してオブジェクトが落ちるような動きをする。
- HoloLens自身が単体のWindows10 PCなので、移動の自由度が高い(PCを接続しなくてよい)
- HoloLensをつけている人が見える景色を他の人と共有することができる。つけている人が視覚障害であったとしても、遠隔地の晴眼者が音声でサポートすることができる。
- 開発環境: UWP。Microsoft Storeで配布することができる。HoloLensの実機はなくても、エミュレータで動作を確認することができる。
関連動画
アイデアソン
アイデアソンの内容については、商品開発にも関連するとのことで、ブログでの記載は割愛させていただきます。
審査員 講評
アイデアソンの内容に言及されていたので、ブログでの記載は割愛させていただきます。
- 社会福祉法人名古屋ライトハウス視覚障害者支援室 係長 岩間様
- 堺市立健康福祉プラザ 視覚・聴覚障害者センター 館長 原田様
株式会社ユーディット(情報のユニバーサルデザイン研究所)会長兼シニアフェロー 同志社大学 客員教授 関根様
- イノベーションはフロンティアから始まる
- 高齢者やユニバーサルな視点を入れて作って欲しい
クロージングトーク
株式会社フィラメント 角様
注意点および方向性
課題のリアリティを感じてほしい
- 課題の持ち手である障害者の人がいること 本当に困っていることはなんなのか
- 視覚障害者が必要とするものは、いずれ我々も必要とする
- 一番繊細なアンテナを持っている → マーケッタビリティのあるもの
技術を先行させない
これができるという課題を絞る
強みがフォーカスされたアイデアにする → どんな課題を解決するものなのか
イベントを終えて
この日のアイデア出しでは、複数のグループから、AIスピーカーの応用を考えておられており、色々なお話が聞けて大変有意義でした。
私自身、高齢者や障害者のWeb利用について考える「Webアクセシビリティ」に取り組みはじめて20年近く経っていますが、やはり障害のある当事者の方のお話を聞くのは、毎回気づきが多いと感じます。
私は最終的には、園さんのアイデアの試作を行うことになり、26日日曜日の発表に向け、現在サーバーレスのバックエンドとAlexaスキルを開発中です。
次回ハッカソンで、よい発表ができるように頑張りたいと思います!